開業したばかりの飲食店の家賃比率は20~25%程度が妥当な理由

インターネットで、飲食店の家賃比率を検索すると「10%にすべき」という意見が多く見られますが、筆者はそうは思いません。

もちろん売上を出せる条件の店では10%を目指せば、お店の利益も大きくだせるほどの売上があるでしょうが、基準の10%を意識しすぎて、スタッフを雇わなかったり、休日を削ったり、ディナー中心のお店がランチ展開すると家賃比率は下がりますが疲弊してしまい、体を壊してしまいます。

それよりも開業したばかりのお店であれば、まず家賃比率を25%、つまり一週間で家賃分をかせぐことを目指して、その後はお店の売上の成長ととおもに、バランスをとりながら家賃比率を減らしていくことが大切なのです。

また、家賃比率を下げるためにいかに閑散期を無くすか?という方法もあります。本日は税理士の私が、飲食店の家賃比率について詳しく解説いたします。

家賃30万円のお店の場合、家賃比率が10%にするなら月の売上を300万円を稼がなくてはならない!これは開業したばかりの個人店にはハードルが高い!

インターネットで家賃比率10%にするとなると、例えば郊外の駅前のお店の家賃が30万円であった場合、お店の売上は月に300万円にしなければならず、開業したばかりのお店の売上で考えると非常に難しいです。

もちろん飲食の形態は10坪の小規模のお店から30坪の座席数の多いお店まで様々で、一概には言えませんが、それでも家賃比率10%を独立開業したばかりの個人店が目指すのは非常に大変なことなのです。

筆者はそれよりも、独立開業したばかりの飲食店であれば家賃だけで考えるのではなく「①材料費」「②人件費」「③家賃」の3つの合計を70%以下にして考えるべきだと思います。例えば

◆売上が150万円のお店

・材料費(Food)‥65万円
・人件費(Labor)‥20万円
・家賃(Rant)…‥30万円

==>材料費・人件費・家賃の合計が70%
==>FL比率は56%
==>家賃比率は20%
==>利益率は30%(光熱費を除く)

独立開業したばかりのお店の売上が150万円だったとする、上記のケースは利益が30%もあるので開業したてのお店では理想的な想定といえるでしょう。当然、設備投資の回収や借入の借金の返済もあるので、もっと売上をあげていかねばなり立ちませんが、始めたばかりのお店のなんとかなる採算ラインだと言えます。

つまり、家賃比率を10%にすることを考えるのではなく「①材料費」「②人件費」「③家賃」の合計で考えるべきなのです。の合計比率が60%を切るのことを目標に売上をあげていくべきなのです。家賃比率は、この3つの数字の中の一つの要素なのですからトータルのバランスで考えましょう。

従業員を雇わず自分一人、あるいは夫婦二人で働く場合は、売上が低くても、利益が出やすいため家賃比率が高くてもどうにかなる

10坪のお店でカウンターがあり、ソファー席が2席程度あるという小規模のお店の場合なら、最初はスタッフを雇わずに経営者一人や夫婦だけで経営することになるでしょう。その場合は人件費がかからないために、売上がもう少し低くても、利益が出やすくなります。

◆売上が130万円のお店

・材料費(Food)‥60万円(売上低下により材料費も下がる)
・人件費(Labor)‥0万円
・家賃(Rant)…‥30万円

==>材料費・人件費・家賃の合計が69%
==>FL比率は46%
==>家賃比率は23%
==>利益率は31%(光熱費を除く)

これからわかることは「家賃比率」だけで飲食店の経営を考えることに意味はなく、あくまで「①材料費」「②人件費」「③家賃」を入れて考えるトータルバランスで収入・支出を考えることが一番なのです。

いずれにせよ、開業したばかりの飲食店だと、家賃比率は20~25%程度が妥当であると言えます。

家賃比率を下げるには「閑散期」をどうするかの工夫が大切!

売上を高める工夫が大切ですが、閑散期にどのようにお客さんを集めるかが、結果として家賃比率を下げることにつながります。例えば、ビジネスエリアであればゴールデンウイークなどの連休時は、客足が一気に下がります。

そのロスをどのように減らすかを考えるのが重要です。私の知り合いの飲食店オーナーは、閑散期にイベントを仕掛けています。「お酒の作り方教室」や「婚活パーティー」などをお店で開催することで、このロスを下げる努力をしています。

閑散期前の二ヵ月前から告知を出して、イベントの集客しているのです。閑散期はあらかじめ把握できるので、早めに手を打っておけば、一年を通して売上を伸ばし家賃比率を下げるにつながるものなのです。

ディナーしかやっていない飲食店は空いている時間が短い!昼の時間を有効活用して、売上を高め家賃比率を下げる!ただしデメリットもある

例えばディナーのみ提供している飲食店は開業時間帯が5時~11時である場合は、たった6時間しかお店をあけておらず、売上の面から言えば、これはもったいないことと言えます。ですから家賃比率を下げる方法としては売上を高めるために「ランチ営業」を行う手法もあります。

その際は、冷凍食品を使ったりカレーにするなど、調理の手間がかからないメニューを中心にランチ営業を行い、例えば一食700円で、1日10食売れると1日の売上は7000円です。20営業日で14万円の売上になり、家賃比率を下げることにつながります。

あるいは、コロナウイルスの影響で世間的に利用率が高まっている「デリバリー営業」を行うという方法もあります。もし店舗周辺で予約注文をとることができるならば、1日に1万円の売上を得ることができれば、20営業日で月に20万円の売上になり、家賃比率を下げることができ、閑散期を埋めるのにも役に立ちます。

ただし、このデリバリー注文をやっているということを周辺の家庭やオフィスに知られないといけないのですが、実は、現在全くの無料で使える「menu(メニュー)」という飲食店向けのアプリがあります。

このアプリの加盟店になると、このアプリを使って、周辺地域にデリバリー店としての認知を簡単に広げることができるので、menuというサービスを聞いた事がない方は、下記のホームページをみてみてください。固定費も決済手数料も今のところかからないので、新規にお店を出す方は登録だけしておいても損はないはずです。

menu(メニュー)公式ホームページ

ただし、ランチ営業やデリバリーは以下の3点のデメリットに気をつけなくてはいけません。

デメリット①昼も夜も営業するので疲れる
デメリット②昼は客層が異なり、集客にてこずる可能性も
デメリット③材料費も増える

特にデメリット①については、ランチ営業すると仕込みの時間を入れて最低3時間は営業にあたらないといけませんので、夜だけの営業に比べると結構疲れます。またお昼の客層は、夜とは異なる商圏であることが多いので、客層にあわせたメニューを開発する必要があります。

休業日を無くして、売上をあげてなるべく家賃比率を下げる!開業したばかりのお店なら、これもしかたなし!

休業日を作らないで、その分お店を開けて売上を高くして家賃比率を下げる方法です。

休みがなければ当然疲れますが、お店を最大限にあけることができるので、売上を高めることができます。従業員がいなければ、人件費も気にしなくてよいので、家賃比率を下げる方法としてはよく利用されます(家賃比率というよりは売上をあげる方法ですが)。

ただし、お店の場所がビジネスエリアであれば、土日に開業しても客足はいまいちだったりしますので、その場合はお店を閉めておくか、土日に関しては完全予約制とすることで、無駄を省くことができます。

私の知り合いのバーなどは、開業した最初の1年間は休業日無しで、運営し、売上の目途がたった時点で、休業日を作るなどしており、飲食店オーナーは売上の目途がたつまでは休業日を無しにするのも一つの手だと思います。その場合は体調管理に気をつけなくてはいけません。

昼(夜)の使っていない間に店舗スペースを他の事業者に貸し出して、収益源を増やして家賃比率を下げる!

「軒先ビジネス」だったり「シェアレストラン」あるいは「時間貸し」「場所貸し」というサービスがあります。いずれも同じで、お店を持ちたいけど、場所がない方に、空いている飲食店の時間やスペースを貸すサービスのことです。下記のようなサービスですが、

軒先ビジネス – 貸しスペース予約サイト

これに登録しておけば、立地や条件が気に入った事業者に、店舗が活動していない時間に店舗を貸すことができます。1日あたり3,000~6,000円で貸し出すこともできますが、相場は立地場所やスペースによって変わってきます。

もし借り手を見つけることができれば一ヶ月あたり数万円から10万円程度の収益を得ることができ、その売上を家賃にあてることができれば家賃比率を下げることができます。

ただし、最初からこの手のサービスをあてにした収益設定にしたお店が繁盛するとも思えませんので、もし借り手が見つかっても「おまけ」程度に考えておきましょう。メインはあくまで自分の飲食ビジネスなので、考え方を誤ってはいけません。

家賃交渉をして、家賃を下げる!

家賃交渉する余地があるのなら、言いだしづらいことですが、家賃交渉をしてみるべきです。

しかし、儲かっていないという理由だけで家賃交渉しても、大家が話を聞いてくれません。それはただのわがままで、経営者とていは恥ずかしい行為です。そうではなく、必ず交渉材料を持っていくべきです。例えば

「同じ条件の周辺の家賃相場は27万円程度なのにうちは30万円も取られている!」
「内装が思ったより、古い!」

など、交渉材料を見つけて交渉すべきです。そうしなければ、なかなか大家も首を縦に振ってはくれません。ただし、これが都内の繁華街となると、交渉は厳しいでしょう。なぜなら都内の家賃は上がっており、売手市場のため、家賃交渉をしても「出てってください!」となる可能性もあるからです。

所有する自宅を改装して、飲食店にすれば家賃比率は0%

自宅を改装したり、あるいは親戚から相続した自宅を改装して、飲食店にした場合は家賃比率は0%となり、改造費のリフォーム工事代金が初期費用としてかかるだけになりますから、固定費を圧縮できます。

ただし、気をつけなければならないのは、所有する自宅が住宅地にある場合は「狙っている飲食店のターゲット層が多くいるのか?」という点を考慮しないと、そもそも売上を高めることはできません。地方を歩くと、普通の住宅に看板を設置しただけのカフェがあり「住宅では?」と思うような飲食店があります。

そういうお店は「家賃」や「人件費」がゼロ円であり、最悪売上がゼロ円であっても、他の収入があるために、売上度外視でなりたっているケースがあります。つまり、売上というより、主婦の空き時間をカフェ経営にする感覚程度ならなりたちますが、事業として売上をたてて、事業を大きくしていく経営には当てはまらないことがほんとんです。

まとめ:家賃比率を下げるよりもトータルの収支が重要

家賃比率を10%にすることができるならば、それは間違いなく繁盛店です。しかし、独立開業したばかりの方は、家賃比率で考えるのではなく

①材料費
②人件費
③家賃

合計値を売上の70%以下にすることを目指すことを考えるべきです。そのためには、リピーターを作る工夫や、単価をあげるなど、様々な売上を高めることが大切になってきます。しかし、家賃は固定費で大きな割合を占める費用ですから、家賃比率を常に把握しておくことは飲食店経営において非常に大切なことなのです。

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