プロが教える飲食店オーナーのための人件費管理術!

飲食店経営者や、これから飲食店の出店を考えている方は、

「飲食店の人件費はどれくらいなのか?」
「飲食店で人件費を抑えるコツなどあるのか?」

ということを検討しているのではないでしょうか?飲食店での人件費の考え方は、お店の規模によって上下しますが、おおむね売上の20~30%が飲食店の人件費となります。

本日は税理士の筆者が、飲食店の人件費について詳しく解説いたします。

FLコスト=Food(材料費)+Labor(人件費)は「50%~60%以内」

飲食店で、しっかり利益を出すための考え方としてFLコストがあります。

「F」はfoodの略で材料費のこと
「L」はLaborの略で人件費のこと

飲食業界では、このFとLを足した合計値のFL比率を50~60%以内に抑えることで、利益を出すための基本的な指標として用いられます。例えば、

◆売上が100万円の飲食店のFL比率の例

売上100万円
材料費(F)は30万円
人件費(L)は25万円
家賃等の経費は20万円
利益は25万円

この場合はのFL比率は55%ということになります。

この例からもわかるとおり、利益を出すためには人件費(L)を下げた方が良いことがわかります。経営者目線から言えば、正社員よりもアルバイト、アルバイトでもなるべく時給は低く抑えたいと考えがちです。

しかし、これはあくまで数字上の話だけで、実際には数字に見えないお店の雰囲気やコンセプトによって、人件費の考え方は変わってきます。

お店の雰囲気やコンセプトによって適正な人件費の考え方は違う!

それでは人件費という考え方を「①カジュアルイタリアン」と「②高級フレンチ」で比較して考えてみましょう。

①カジュアルイタリアンの人件費の考え方

例えば、カジュアルイタリアンのお店を出店しようとした場合、ランチ時などは、回転率を高めていくために、アルバイトを雇い、お客さんをどんどん回していくべきでしょう。この時、アルバイトに求められるのは丁寧な接客よりも手際の良さだったりします。そうなると、ある程度のアルバイトであれば、仕事は回せます。

こういったカジュアルなお店のアルバイトならば、時給は1,000円程度で雇えるでしょうし、そこまで採用にこだわらなくても経験のない学生や主婦の方でもお店を回すことができますので、人件費(Laborコスト)を低く抑えることができます。

②高級フレンチの人件費の考え方

では、雰囲気にこだわった高級フレンチではどうでしょうか?高級フレンチのスタッフともなれば、1人で3~4席に目を配らせ、食事の進み具合などを加味し、また料理やドリンクに関して質問されれば、まるでバーテンダーのようなそれなりの回答できることが必要とされます。

このようなお店の場合、人手という考え方ではなく接客スキルや求められるので、アルバイトではなく正社員を雇い、しっかりトレーニングを行わなくては、お店が繁盛していきません。

つまり、この2つの例でわかるのは、一概にFL比率といっても、お店の雰囲気やコンセプトによってこの比率は大きく変わるために

「20%程度が正しい!」
「30%は行き過ぎた!」

という考え方は成り立たず、あくまで目安であることを認識し、自店にあった比率を目安に置くべきなのです。

人件費を抑える考え方は「時給を抑える」ことではなく「忙しい時にバイトをあてる」こと

では、この人件費を飲食店のオーナーが抑えるにはどうすれば良いのでしょうか?それは「時給を抑える」といった考え方ではなく、「忙しい時にバイトをあてる」という考え方です。

例えば、安い時給でアルバイトを雇えた場合、満遍なくシフトに入ってもらったとしましょう。大抵の飲食店には必ず忙しい時間帯と、暇な時間帯、あるいは忙しい曜日、暇な曜日があります。いくら時給が安くても、オーナー一人で対応で余裕にで対応できる時間帯に、バイトを入れては、人件費が無駄になります。

それよりも、アルバイトをなるべく忙しい時間に入ってもらい、忙しくないときは「帰って」もらうことができれば、人件費の効率良く下げることができます。しかし、これのコントロールが非常に難しく、アルバイト側にしてみると「なんだよ稼ぎたいのに、帰れって!こんな店やめてやる!」ということになります。

まして、人手不足な時代ですから、アルバイトもお金を稼げないので、やめてしまいます。ですからそうならないためにも、アルバイト採用時に「暇なときには帰ってもらうこともあるけど問題ないですか?」としっかり約束しておくことです。また、繁忙時期にがんばってもらったときに、手当を出すなどして、アルバイトとの信頼を築くことも重要なのです。

社員を雇うなら「初心者」がいいのか?「経験者(ベテラン)」がいいのか?実は初心者の方が言い場合も!

通常の職場なら「初心者」よりも、「経験者(ベテラン)」の方が優遇されることがあるでしょう。しかし、飲食店の場合は、そうではない面もあります。例えば飲食店経験者であれば、やはり接客スキルや、動きは初心者よりも抜群に優れています。

そうなると、採用時に初心者と同じ給与というわけにはいきませんので、初心者を雇う場合より人件費は高くなります。

しかし、経験者の場合は、プライドも高いことが多く、飲食経験者なだけに接客に関する考え方が違っていたりすると、店内でオーナーの意図しない行動をとるかもしれません。それは非常に面倒なことです。プライドの高い方の中には常連客にオーナーの悪口を言う方もいます。

実は経験者よりも「愛想の良い子」の方が売上を持ってくる!

そして、お店の売上という面で考えると、経験者よりも、初心者だけど「愛想の良い子」の方が、売上を持ってくる場合があります。例えば気立てが良く、笑顔の素敵な女の子がシフトに入るだけで、その子目当てのお客さんが入ってくるでしょう。そうすると売上にも確実に反映されます。飲食店オーナーがこういう売上に貢献する子が雇えれば最高です。

では、経験者でありますが、愛想が普通の方はどうでしょうか?高級でないと雇えませんが、売上があがるというよりも、運営が滞りなく回るという表現が正しく、売上が増えるということに結び付かないのではないでしょうか?

ですから、飲食店オーナーにとってみると、人件費の高い経験者よりも、愛想の良い初心者の子の方が、売上に貢献し、かつFL比率を非常に下げてくれるものなのです。

ですから、飲食店オーナーはそういった子を見つけることができたら、なるべく引き留めるように配慮するのも経営なのです。

人件費以外に重要なことは「売上を抜かせない(横領)」こと!売上が抜かれたら、それは経営者の責任!

今はキャッシュレスが流行っていますが、飲食店は現金商売が基本です。そうなると、全て社員やアルバイトにお店を任せていると「売上を抜かれる」ことが結構あります。数千円という可愛い額から売上の数パーセントという大きな横領まで様々です。

多くの社員やアルバイトはこういう不正をしませんが、しかし、統計があるわけでもなく、監視カメラもなければ、いくら抜かれているか全く予想がつきません。ですから、経営者は売上を抜かれないための努力をすべきです。

私の知り合いの飲食店オーナーは、アルバイトの目の前で意味もなく在庫数を調べてたり、レジを開けて、こまめにお金を数えています。しかし、これは全部「演技」です。アルバイトに対して「自分は全て把握している」ということを示しているのです。

こうなると、社員やアルバイトに「売上抜いてもバレないかな?でもうちのオーナーはチェック厳しいからな無理だな」と思わせるべきなのです。オーナーに隙があるから、売上を抜かれるのです。

私の行きつけのバーテンダーから聞いたのですが、近所のスナックのママがいなくなったそうです。その理由は長い間、売上を抜いていたのがバレたそうです。ただ、この場合、一番悪いのはママであることは間違いありませんが、隙を作った、オーナーにも責任があります。

このように人件費ばかりでなく、売上を抜かせないことも考えることが「売上を上げ」FL比率を高める一つのコツなのです。

人件費だけで経営を考えない!必要なのはトータルバランス

人件費を下げることばかり考えては意味がなく、FLコストを下げることで損益分岐点を下げ、利益を最大化するためには、トータルバランスが必要です。人手を多くすることで、売上が飛躍的たかまるなら人件費を投じてもよいですし、損益がギリギリの場合は、人件費や材料費を見直して、利益を確保するべきです。

人件費はその一つの要素にすぎません。また、飲食店での採用は人手不足の影響でかなり難しくなっていますので、良いアルバイトや社員を雇うことができれば、長くいてもらう工夫を行うのも経営の一つです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です