【2019年版】プロが税理士業界の現状と今後を徹底解説

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
業界のイメージ

税理士を目指す方や、税理士業界を調査している方にとっては、今後、この業界がどのようになっていくのか気になっているのではないでしょうか?

税理士ぎょうかいは非常に高齢化が進んでおります。後程図で紹介しますが、60代以上の税理士が非常に多くなっております。そこに、AIなどの自動化の波が進み、残念ながら税理士はこれからの産業!とは言い難い側面があります。

本日は税理士の筆者が税理士業界の現状と今後について、筆者の見解を詳しく解説してまいります。

税理士は毎年増えている!2019年は全国で7,7327人

まずは下記のグラフをご覧ください。

データ引用元:佐藤茂税理士事務所ホームページ

◆税理士の人数推移 1999年~2018年まで

ご年配の方が多い印象の税理士ですが、実は全国で見ると人数は増えております。その理由は、毎年税理士になる人の方が、税理士の資格の登録抹消される方よりも多いためです。下記のグラフをご覧ください。

◆税理士の新規登録者と抹消者の推移

上記グラフを見ると、毎年税理士の資格をとって登録される新規登録者が3,000人に対して、登録抹消者2000人程度であり、毎年1,000人程度が、税理士となっている計算になります。

しかし、今後は税理士の人数は減る見込です。

①税理士の高齢化!税理士には60代が多い

まずは下記の図をご覧ください。

上記グラフ引用先PDF:データで見る税理士のリアル。 – 日本税理士会連合会

このグラフは日本税理士会連合会が、平成26年時点で税理会への登録者32,747人の年齢分布図をグラフ化したものです。これを見ると一目瞭然で、税理士には60代が多く全体の中の30.1%を占めていることがわかります。その次に多いのは50代で、17.8%

◆税理士で多い年代のベスト3
60歳代 30.1%
50歳代 17.8%
40際代 17.1%

毎年、新規登録者が抹消者を上回っているのに、なぜ高齢者が多いのでしょうか?それは税理士になるための試験制度が深く影響しております。

税理士になるには、11科目の中から5科目を選択し、5科目以上に合格しなくてはならず、その合格率は非常に低いのです。下記をご覧ください。

◆平成29年度の税理士科目別の合格率

上記画像引用先:税理士の仕事

このように税理士試験はかなりの難関資格であることがわかります。そのために最短でも税理士になるには4年~5年かかるのが通例であり、合格する年齢に達するのが30過ぎや40代の方も珍しくはありません。つまり新しく入ってくる方で20代などの若い方が少ないために、業界としては税理士の高齢体質になっているのです。

業界の若返りを考えるためにも、試験の難易度を下げるなどの対策が求められるのです。

②税理士の平均年収

年収ラボで公開されている税理士の平均年収のグラフが下記になります。

グラフ引用先:税理士の平均年収(平成27年)

このデータによると2016年の税理士の平均年収は717万円と、この年のサラリーマンの平均年収が442万円ですから、だいぶ高いことがわかります。ただし、これはあくまで平均で開業税理士で、集客に苦戦してい方の年収は300万円を下回ることもありますし、逆に1億円以上の所得を稼ぐ税理士もいます。

このため税理士の平均年収は、開業の方がのデータが多く入っているので、高めに出ている傾向があります。

③税理士業界に押し寄せるAIの波は日本では限定的

下記の日経新聞の記事によると、今後10年で税理士は92.5%がAIに置き換えられるとの研究結果が発表されておりました。

日本経済新聞 参考記事:奪われる定型業務 

しかし、筆者はこの考えに懐疑的です。それには3つの理由があります。

(1)日本の税制度は複雑

下記記事によると、電子化が世界でもっとも進んでいるエストニアでは、税務の申告をインターネット上で済ませることができます。しかし、それはエストニアが130万人という小国であり、かつ税制をシンプルにしているから成立する仕組みなのです。

参考記事:税理士の仕事は、AIに奪われてしまうのか?

それに比べて日本の税制度は複雑であり、例えば「家事案分」などの明文化されていないグレーな部分は、明確な計算式があるわけではなく、税理士の経験や勘が頼りになるため、AI化しにくいのです。

(2)日本は現金主義

税務申告のAI化を進めるには、銀行口座と連携させる必要がありますが、日本の多くの産業は現金主義であり、キャシュレス比率は2016年で20%程度なのです。

◆日本のキャシュレス比率

グラフ引用先:キャッシュレスの現状と推進(経済産業省資料)

現在、国をあげてキャシュレス化に乗り出していますが、それでも日本での現金主義はそう簡単に変わらないと筆者は考えます。それは次の理由にも関係します。

(3)小規模事業者の現金決済による脱税行為が横行している

B2Bやインターネット事業などをしている場合は、決済のやり取りは、請求書ベースの銀行振込がベースとなっております。しかし、多くの飲食などのサービス業は、現金決済がメインです。例えば売上計上を21時までとし、21時以降の売上を売上に計上しないという脱税行為は、大変残念ながら日本中で行われております。

このため、こういったことを行う事業者にとっては、キャシュレスが進み、税理士がAIになることは税制上デメリットが多いため、人間の税理士の方が都合が良いのです。

④税理士業界の競争激化

一昔前は、税理士業界では広告活動にはルールがあり、「事務所名」「住所」「電話番号」などの基本情報しか、広告をすることができませんでした。ダイレクトメールの記入内容も大きく制限されていたのです。このため事務所が自由に広告を打つこともできませんでした。

しかし、バブル崩壊後の2002年に、あらゆる業界で規制緩和が行われ、税理士業界においても、税理士が広告を自由に行うことができたのです。そしてちょうどインターネットの普及により、その波に上手くのった事務所が大きく儲かった一方で、広告が苦手な事務所は売上を伸ばすことができず、業界の二極化が進んでいるのです。

⑤RPA普及で、ITスキルのない税理士事務所は儲からない?

税理士業界にも、RPAが普及しており、今まで手作業でやっていた記帳業務も、RPAで代行する税理士事務所も増えております。RPAがあれば、Excelとブラウザーを使った業務を自動化することができるために、今まで人にやらせていた仕事をRPAで置き換えることが可能です。

しかし、RPAを使いこなすには、高いITスキルが必要になるのと、RPAの高い導入費用が必要となります。ITリテラシーの高い税理士事務所は、どんどん、RPAなどの最新ツールを導入し、業務を効率化しているのに対して、ITが苦手な税理士事務所は、昔ながらの手作業での業務を行っており、その差は税理士事務所の利益に如実に現れます。

⑥税理士事務所の跡継ぎ問題

先ほども解説したとおり、税理士の30%以上は60代と高齢の方であり、個人で開業されている方は、後継者がいないと、廃業することになります。多くの高齢の税理士は「後継者が見つからなければ自分の代で廃業する」と思っており、また数少ない税理士も、従業員が10名以上の中規模以上の税理士事務所に集まるために、後継者問題はなかなか解決しません。

また、税理士事務所が廃業になると、そこには多くのクライアントがいますから、税理士事務所を乗り換えるにしても「うちの事情をよく知らない税理士には頼みにくい」ということも多いのです。

しかし、高齢の税理士には、ある日突然、体調が悪くなり業務ができなくなるリスクがあるため、むしろ税理士が健在のうちに、税理士を乗り換えるほうが引継ぎがスムーズになるでしょう。

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*